【研】 食品の用途発明の認定
昨日、特許庁職員による食品の用途発明の認定に関する説明会に参加してきました。
内容としては、概ね、食品の用途発明は、医薬品や化粧品といった他の分野の用途発明と同様に審査されるというものです。
ただし、要注意なのは、クレームに「食品」と記載するのではなく、「食品組成物」などと記載すべきという点です。
例えば、「バナナを有効成分とする●●用食品」という場合には、発明の詳細な説明中に特段の記載がなければ、それは「バナナからなる食品」、すなわち、バナナそのものを包含することになり得ます。
この場合、用途限定は意味をなさず、新規性は否定されるということになります。
したがって、「バナナを有効成分とする●●用食品」は「バナナを有効成分とする●●用食品組成物」などという記載に改めるか、又は発明の詳細な説明において「バナナを有効成分とする●●用食品」にはバナナそのものは除かれることを言及する必要があります。
一方で、他の表記として、「バナナを有効成分とする●●用組成物」というのもあり得ます。
そうなると、「食品」という文言にどれほどの意味があるのかという点が問題となってきます。
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説明会では、「用途限定のないものとして解釈される動物・植物」の範囲についても触れていました。
この範囲については、
①加工性
②動植物の非部分性
を基準にするという見解が述べられました。
こういう明確な基準が示されて、少し驚きです。
つまり、ハチミツや小麦粉などは、動植物の一部ではなく、加工されたものであるので、上記の動植物の範囲には入らないということです。
ただし、加工されたものではあるけれども、動植物の一部を用いている場合は、加工の程度によって判断が分かれるであろうとのことです。
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以上の点を含めて、説明会での内容は概ね首肯できるものでした。
しかし、「用法・用量」の特定は食品組成物には認められないという点は少し疑問です。
これは、従前と変わらずに、医薬に限定して認められるというのです。
ただし、そうすべきとする根拠も裏付けも説明がありませんでした。
医薬に限らず、食品や化粧品でも、用法・用量によって作用点や効果に差異が生じるのは技術常識なのではないでしょうか。
この点は、特許庁の「運用」であり、法律上の要件ではないので、最終的には法廷に持ち込まれた段階で判断が下されることになります。
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いずれにしても、特許として認められる発明の範囲が広がることは歓迎すべきことです。
もちろん、特許が存在することにより廃れた産業分野があるのであれば別ですが、おそらくそのような分野はないでしょう。
むしろ、特許のような新規参入する足掛かりがないことから、世間的に見向きもされず停滞している産業分野は少なからずあると思われます。
特定の産業分野が活況か否かは、ある程度は新規参入者の数と相関しているのではないでしょうか。
人類の叡智は無限であり、特定の個人や組織が独占するのは非常に困難なことです。
特許が認められる発明の範囲がこれから益々広がることを期待しています。
弁理士 森本 敏明
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